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第7話 ウォーウルフキングとの戦い ~アグリサイド~

Author: 光命
last update Last Updated: 2025-03-11 19:08:21

俺はウォーウルフキングと対峙して苦戦をしていた。

それを見かねたゾルダが急に剣から飛び出してきた。

「おい、お前、こっちだ。

 ワシが相手をしてやるぞ。

 ありがたく思え」

そう言いながらウォーウルフキングの前に立ちふさがるゾルダ。

静寂の中にウォーウルフキングの唸り声が響き渡る。

「グルルルルゥ……」

五臓六腑に染みわたるような低い声を出しながらゾルダを睨みつけていた。

「そう血気盛んにならんでもよいのにのぅ。

 うーん、そうだのぅ……お前に30秒くれてやるぞ。

 その間に、逃げるなら見逃してやってもよいぞ」

ゾルダはニヤニヤしながらウォーウルフキングに語り掛ける。

何もそんなに煽らなくてもいいんじゃないか……

俺が全然歯が立たなかったんだから、相手はかなり強いんじゃないのか。

「ゾルダ、油断するなよ」

相手を見下しているゾルダに対して俺は声をかけた。

「ほぅ、油断するなよとは誰に言っておるのじゃ。

 このワシにか?」

そうだよ。

だいぶ上から目線で話をしているから足元をすくわれないか心配になる。

「いかにも余裕がありそうにしているから、大丈夫かと思って」

その言葉を聞いてか、ゾルダがさらに満面の笑顔でドヤ顔になる。

「余裕があるから、そういう態度をしておるのじゃ」

ゾルダが俺の方に体ごと向いて言い放つ。

戦っている敵に対して背を向けているのである。

そんな隙を見せたら、ウォーウルフキングが襲ってこないか……と思ったら、案の定襲ってきた。

「危ないっ」

思わず声を上げてしまう。

ゾルダはまだ俺の方を向いたままだ。

ウォーウルフキングは爪をむき出しにして、ゾルダに襲い掛かってきた。

「おっ、ようやくきたかのか。

 こちらに来るということは、逃げる意思はないということじゃぞ」

全く振り向きもせずにひらりとかわす。

「せっかく時間をあげたのに、逃げずに襲い掛かってくるとは、なかなかの度胸よのぅ。

 その度胸を賞賛してあげようぞ」

ゾルダがなんか楽しそうだ。

にやりとしながら、ウォーウルフキングに目を向ける。

息つく暇なく手を出してくるウォーウルフキングだが、全くゾルダにはかすりもしていない。

風に吹かれている柳のようにしなやかにかわしていく。

「すっ……凄い」

あっけにとられてしまった。

ゾルダの動きに目を奪われる。

そう言えば、元魔王って言っていたけど、本当なのかも
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